こんにちは。
今日は、3月23日に今年の土地の公示地価が公表されたこともあり、このタイミングで土地の公的な価格と鑑定評価の方法について書きたいと思います。
土地の価格(公的)
公示地価
公示地価は国土交通省が標準地として選定した土地の1月1日時点における1m2当たりの価格で、毎年3月に公表されます。
公示されるのは更地の価格です。
標準地を決めるのは国土交通省の土地鑑定委員会で、ほぼ毎年同じ標準地を鑑定して土地鑑定委員会で価格を決めます。
ほぼ毎年同じ地点の価格を公表するので、地価変動がわかりやすいというメリットがあります。
実際に土地を鑑定するのは土地鑑定委員会から任命された2名以上の土地鑑定士で、それをもとに土地鑑定委員会が価格を決めて公表します。
公示地価は国土交通省の検索システムで調べることができます。
一般の土地取引の目安や、公共用地の取得価格算定の基準とされます。
基準地価
基準地価は、都道府県が選定した基準地の7月1日の1m2当たりの更地の価格を調査したもので、毎年9月下旬に公表されます。
公示地価とともに、実勢価格に近い地価として土地価格の目安として利用されています。
基準地価は都市計画区域外も含まれるため、都市の郊外の土地価格もわかり、公示地価を補完する役割があります。
調査時点の違いから、公示地価と基準地価を比較することによって、ある程度地価の変化を見ることができます。
路線価
路線価は、国税庁が調査した土地価格で、毎年1月1日時点における主要道路に面した宅地等の1m2あたりの評価額です。
路線価は、毎年7月に公表されますが、その年に発生した相続や贈与における宅地等の評価は1月1日時点における路線価が適用されますので、もし1月に発生した相続であれば7月に公表されるまで申告を待たなければなりません。
調査地点は32万9,000地点に上り、売買実例価格、公示地価、不動産鑑定士等による鑑定評価額、精通者意見価格等をもとに国税局長が評定します。
また、路線価は公示地価の8割程度となっています。
固定資産税評価額
固定資産税算定の基準とするための固定資産の価値を評価した額で、1月1日を基準日として市区町村が公示地価や不動産鑑定評価額の7割を目途として算定します。
評価額は、3年に1度の評価替えで変わります。
土地の価格(実勢価格)
実勢価格は実際の取引価格であり、土地を売買する際の地価の目安になります。
しかし、実際に土地の売却や購入を検討する際には、実勢価格だけでなく公示価格なども確認する必要があります。
不動産の鑑定評価
原価法
対象不動産の再調達原価を基に不動産を鑑定評価する方法です。
まず、対象の不動産の再調達原価を割り出します。
次に、建築後の減価修正(経過年数による老朽化による価値の低下を差し引いたもの)が積算価格(現在の価値)と推測されます。
建物または建物と土地の場合、再調達原価の把握と減価修正を適切に行なうことができる場合に有効で、対象不動産が土地のみの場合でも再調達原価を適切に求められる場合には適用できます。
取引事例比較法
過去に行われた実際の不動産取引の事例から価格を求める方式です。
具体的には、近隣の不動産の過去の取引を基準として必要に応じて地域・個別物件の要因を比較して不動産の価格を算出します。
近隣地域等において対象不動産と似た不動産の取引が行われている場合に有効です。
ただし感覚的な部分もありますので、評価する鑑定士により評価に差が生じることがあります。
現在では中古住宅の評価方法として一般的です。
収益還元法
不動産から得られる地代・家賃などの収益を将来にわたって算出し、それを現在価値に割引いて評価します。
アパートや賃貸マンション等の収益物件を売買する際に多く利用されます。
収益還元法は、賃貸用不動産、賃貸以外の事業に要する不動産の価格を求める場合に特に有効で、取引事例比較法や原価法と比べて合理的な方法と言えます。
ただし、過去の運用履歴とその数字の信頼性が前提となりますので、対象不動産に関する資料の妥当性を精査する必要があります。
まとめ
私は法人の税務会計に携わっていますが、土地の評価は実務では必須です。
資産の時価評価及び減損の判定等に使用しますが、毎年、路線価が公表された直後の第一四半期決算において土地の再評価を行います。
公示地価では標準地の価格しかわかりませんが、路線価の場合は各道路単位の価格がわかりますので、まず路線価で対象の土地の価格を算出し、0.8で割れば公示地価が算出できます。
もしくは、固定資産税評価額を0.7で割って算出することもできます。
今まで見てきた公的な土地の価格は、我々の日常生活では中々馴染みがありませんが、固定資産税を支払っている方は、毎年4月頃に固定資産税の納付書が送られてくると思いますので、多少身近に感じることができるかもしれません。
次に不動産の鑑定評価ですが、これこそ日常生活で関わることはまずありませんが、仕事の上では全く無縁ではありません。
例えばゴルフ場の減損の判定の際には鑑定評価が必要になります。
方法としては原価法の積算価格、もしくは収益によるDCF法の収益還元法のいずれかになるかと思いますが、現在は収益還元法が一般的では無いかと思います。
しかし、これはコンサルタント会社を通して不動産鑑定士に依頼することが一般的なので、我々はあくまで結果を用いて減損損失額を算出するだけです。
このように、公的な不動産の価格にはいくつかの種類があり、目的に応じて使い分ける必要があります。
また、鑑定評価は専門家である不動産鑑定士が算出するものですが、方法によっては鑑定士の感覚的な部分が影響を与えることもあり、実態が見えにくいからこそ難しいところがあると思います。
個人としては自宅を売ったり買ったりする時に密接に関わることになりますので、その際には自ら幅広く情報収集をして、自分なりに納得したうえで取引を行えるようにすることが必要では無いでしょうか。
今回も最後までお読みいただき有難うございました。
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